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1.錬金術師の夢
2.まるめて持てるテレビ
3.紙のような電池
4.プラスチックの電子回路
5.試験管のかわりにコンピュータを手にした錬金術師たち
6.融合するナノテクノロジー
筆者:歌田 明広

1.『DNA』、『遺伝子』
2.『ゲノム』
3.『クローン』
4.『遺伝子治療』『遺伝子組み換え食品』…バイオテクノロジーで何ができるか。
5. 『DNA鑑定』『バイオレメディエーション』
筆者:富永 智紀



『情報工学から情報化学へ--情報機器の小型化をもたらすもの』歌田明弘

『紙のような電池』
 長い年月、電池を入れっぱなしにして、機械をほうっておいたら、電池からどろっとした液体が漏れ出て、機械が使えなくなっちゃった、という経験は誰しもあるでしょう。
 電池は、正極と負極のふたつの電極と、その電極にはさまれた電解質で構成されていますが、洩れ出てくるのは、液体の電解質です。
 電池の軽量化を妨げているのは、じつは電解質が漏れ出てくるというこの困った現象に関係しています。電解質が液体のために、金属缶でしっかり覆っていないと漏れ出てきてしまうのです。電池というと金属缶に入っているように思いますが、原理的にはかならずしもそうする必要はありません。ただ、液体の電解質を厳重に覆わなければならないことから、硬い物質で包んでいるわけです。
 困りもののこの電解質を、液体ではなく、固体、もしくは固体に近いゲル状の物質に変えてしまったらどうでしょうか。もう漏れ出てくる心配がなくなるので、金属缶のかわりにフィルムでもよくなり、はるかに軽量薄型にできます。
 電池はもうすでにずいぶん軽いようにも思われますが、じつは機器をより軽くするための頭痛の種のひとつになっています。携帯電話は1年ごとに10グラムずつ軽くなっていき、60グラムを切るものまで出てきて、さらに薄型軽量化が図られています。たとえ10数グラムの電池でも無視できる重さではありません。
 98年2月の長野オリンピックのさいには、30立方センチメートル45グラムの超小型軽量の腕時計型PHS電話機がスタッフに配られれましたが、これからは、携帯電話どころか、肌身にコンピュータを身につけるウェアラブル・コンピュータの時代もはじまります。ごろんとしていて硬くて重い電池は、場所をとって、機械のデザインの邪魔になります。
 ウェアラブル・コンピュータ以外にも、電子ペーパーといって、紙のように薄いディスプレイも研究・開発されつつあります。表示部分は、まえのページの有機ELのように1ミリの何分の1という厚さになっても、電源部分がかさばっては何にもなりません。というわけで、電池の小型化は、未来の電子機器にとって至上命題のひとつです。

進化する電池――超薄型電池の登場
   携帯機器では、繰り返し充電して使える蓄電池とか二次電池とよばれる電池の改良が求められています。
 二次電池は、コイン型のニッケル・カドミニウム電池(略してニッカド電池などとも呼ばれています)が広く使われていましたが、1991年になってリチウムイオン電池が市場に現われました。
 リチウムイオン電池は、リチウムを吸いこむことのできる炭素材をマイナス極に使い、リチウムイオンを吸いこんだり電解液に放したりして、充電や放電をする仕組みです。電気容量が大きく長時間使え、より小型化できるという長所があります。
 携帯機器をもう何年も使っていれば、電池の持ちがよくなったな、と感じられる人もいるでしょう。しかし、機能が増えれば、電力も使い、電池の持ちは悪くなります。電池の能力の向上と多機能化がせめぎ合っているわけですが、リチウム電池は、ニッカド電池に比べて、重量あたりのエネルギー密度が約2倍になっています。
 このリチウムイオン電池にも、液体の電解質が使われていました。電解質が洩れると困りますから、金属缶で包む必要があり、厚さ4ミリが限界といわれていました。金属缶を引き延ばす技術を使って4ミリ以下のものも出てきましたが、大幅に薄くすることはむずかしいでしょう。
 薄型の携帯電話が求められるようになってきたので、厚みはとくに重要な問題です。
 やがて、リチウムイオン電池の電解質をポリマーに変えたリチウムポリマー電池もつくられるようになってきました。リチウムポリマー電池は、固体に近いゲル状の電解質なのでフィルムでくるむことができ、厚さ1ミリ以下のものも出はじめました。平べったいクレジットカードのような形になっていることが多く、面積を大きくしたり何枚か重ねて、電気容量を大きくしています。

環境にもやさしいポリマー
 
 
導電性ポリマーの電極を使った
「プロトンポリマー電池」
 
   
 電解質にポリマーを使うだけでなく、電極に導電性ポリマーを使った電池も研究されています。白川博士が研究したポリアセチレンを電極にする方法は早くから試みられましたが、さまざまな課題があることがわかり、別の高分子を電極にして、携帯電話などのバックアップ用電源になっています。ポリマーを電解質にしたリチウムポリマー電池もこうした研究から生まれたわけです。
 ポリマーを電解質に使うと電気抵抗をこれまでの1万分の1にまで低くでき、高速化したパソコンに向いているということで、コンデンサーの電解質にも導電性プラスチックが使われています。コストも安く小型化もできます。
 2000年春にはさらに、導電性ポリマーを電極にした「プロトンポリマー電池」の開発成功も発表されています。エネルギー密度はリチウム電池やニッカド電池よりもまだ小さいものの、急速な充放電が可能で、リチウム電池の10倍以上の寿命があるそうです。ポリマーは、炭素・水素・窒素でできているので、金属をふくむ電池にくらべて環境にもやさしいと、開発の成功を発表した企業は唱っています。
 ポリマー(プラスチック)に電気が通るという白川博士の発見は、情報機器の材料を一新し、このように大きなブレークスルーを生みはじめています。