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1.錬金術師の夢
2.まるめて持てるテレビ
3.紙のような電池
4.プラスチックの電子回路
5.試験管のかわりにコンピュータを手にした錬金術師たち
6.融合するナノテクノロジー
筆者:歌田 明広

1.『DNA』、『遺伝子』
2.『ゲノム』
3.『クローン』
4.『遺伝子治療』『遺伝子組み換え食品』…バイオテクノロジーで何ができるか。
5. 『DNA鑑定』『バイオレメディエーション』
筆者:富永 智紀



『情報工学から情報化学へ--情報機器の小型化をもたらすもの』歌田明弘

『プラスチックの電子回路』
 これまで、プラスチックなど鎖のようにつながった巨大な分子構造をしている高分子(ポリマー)が電気を通すという発見によって生まれたさまざまなIT技術について見てきました。プラスチックは絶縁体として使われてきましたが、ヨウ素などを混ぜると電気を通すようになるというのが白川博士の発見でした。プラスチックに混ぜものをするとどうして電気を通すようになるのでしょうか。
 白川博士は、「満員電車から何人かを抜いて倒れやすくするようなもの」と巧みな比喩でその状態を説明しています。添加物を加えないプラスチックは満員電車のようにぎっしりで、とても電子が動ける状態ではありません。しかし、ヨウ素などの添加物を加えると、電子がそちらに引きつけられ、「あき」ができます。そのあいた空間に電子が順繰りに動いていって、電気が流れるというわけです。

パーソナル・コンピュータを生んだ技術
    研究所の3人の研究者によって発明されました。トランジスタの誕生と、1960年代から量産されるようになった集積回路の発展によって、20世紀のエレクトロニクス技術は大きく進展してきたわけです。
 トランジスタが生まれるまでは、20世紀の初めに誕生した真空管がその役割をになっていました。しかし、真空管を何本も使えば、電子機器は巨大化します。初期のコンピュータは真空管をたくさん使っていたために、部屋を占領する大きさでしたが、1回計算をするたびに、真空管のいくつかが切れ、それを取り替える作業がたいへんだったそうです。そうした手間を大幅に減らし、片手で簡単に持てるぐらいにコンピュータを小さくし、また消費電力もきわめて少なくしたわけですから、トランジスタや集積回路がもたらした影響力の大きさがわかります。トランジスタを発明したベル研究所の3人の研究者ウォルター・ブラッテン、ジョン・バーディーン、ウィリアム・ショックレーの3人は、この成果によって1956年にノーベル物理学賞を受賞しましたし、集積回路をつくったジャック・キルビーは、白川博士と同じ2000年にノーベル物理学賞を受賞しています。
次世代のIC技術
 
ルーセント・テクノロジー・ベル研究所のプラスチック・トランジスター

 このトランジスタやダイオード、さらに基板にいたるまで、温度や添加物によって電気の流れを大きく変化させるシリコンの半導体でできているわけですが、白川博士らの研究によって「満員電車から人を引き抜く技術」が生まれたいま、プラスチックの半導体を使って集積回路をつくることはできないでしょうか。
 プラスチックなどの有機高分子を使うと、より軽量で消費電力が少なく、シリコンの半導体よりはるかに小さい集積回路ができると考えられます。
 こうした研究は、日本でもあちこちの企業や大学が進めていますが、トランジスタを生みだしたベル研究所のホームページにアクセスすると、ぺらっとした透明なプラスチック・フィルムの電子回路を見ることができます。ベル研究所は、プラスチックのトランジスタの開発に成功したのだそうです。
 ベル研究所は、シリコンのゴムのスタンプを使ってコンピュータの回路を印刷する技術も開発したので、Tシャツに図柄をプリントするような感覚でトランジスター回路を印刷することもできるそうです。現在の集積回路は、基板上に写真露光の原理で電子回路をつくっていますが、シルクスクリーンのような印刷技術の要領で、より簡単に集積回路ができるというわけです。
 プラスチックのトランジスタはシリコンの半導体を使うより安くできますし、こうした技術を使えば、プラスチックや布、曲がったものにまでコンピュータ回路が印刷できることになります。
 21世紀は、身の回りのいたるところにコンピュータが入りこむ「どこでもコンピュータ」の時代になると考えられていますが、こうした技術は、そうした時代に必要不可欠の技術なのかもしれません。
 さらにベル研究所は、こうした導電性プラスチックのトランジスタと電子ペーパーの技術を融合させようとしています。ベル研究所が提携を発表した電子ペーパー技術は、マサチューセッツ工科大学で生み出された超薄型ディスプレイ技術で、前ページで触れた有機ELとはまた別のものですが、いずれにしても超薄型のディスプレイ、超薄型の電池、そして超薄型のIC回路ができれば、「紙のようなディスプレイ」や「紙のような電池」どころか「紙のようなコンピュータ」ができることになります。
 印刷するような感覚できわめて安く簡単にコンピュータ回路ができるということになれば、決済や身分証明書になるスマートカードにも利用できます。どこにあるかリアルタイムの情報を発信してくれる荷物のタグとか、スーパーの商品にバーコード代わりに印刷しておけばレジの横を通過するだけで支払いができてしまう仕組みなども活かせるでしょう。

分子エレクトロニクスの誕生