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| 『試験管のかわりにコンピュータを手にした錬金術師たち』 |
古代・中世の錬金術師も現代の科学者も、これまでは試験管やビーカーなどの実験道具を手に、物質を混ぜ合わせて反応させ分子を操作してきたわけですが、それ以外の方法はないでしょうか。
もっと簡単な方法があります。
そうです。分子や原子を直接つかんで動かせばいいのです。‥‥こう言うのは簡単ですが、実際にやるのはたいへんです。なぜかといえば‥‥いうまでもありません。小さいからです!!
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● 「ミクロ」はまだまだ大きい!? |
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前のページの最後にちょっと触れたナノテクノロジーの「ナノ」とは10のマイナス9乗、つまり10億分の1のことを指します。ナノメートルは10億分の1メートル、つまり1ミリの100万分の1ということになります。
宇宙船のような乗り物に乗って人の体の中に入っていく「ミクロの決死圏」という映画がありました。ミクロ――英語の発音ではマイクロですが――は10のマイナス6乗、100万分の1で、ナノの1000倍の大きさです。ナノメートルとマイクロメートルでは象とアリほどにもちがうわけです。
ナノメートルの世界になると、目には見えません。あたりまえじゃないかって? 肉眼ではもちろん見えませんが、光学顕微鏡でも見えないのです。小さすぎて光がうまく反射しないからです。
原子はナノメートルよりもさらに小さく、だいたいナノメートルのさらに10分の1の1オングストロームぐらいの大きさす。
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●原子を見るための装置
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このトランジスタやダイオード、さらに基板にいたるまで、温度や添加物によって電気の流れを大きく変化させるシリコンの半導体でできているわけですが、白川博士らの研究によって「満員電車から人を引き抜く技術」が生まれたいま、プラスチックの半導体を使って集積回路をつくることはできないでしょうか。
プラスチックなどの有機高分子を使うと、より軽量で消費電力が少なく、シリコンの半導体よりはるかに小さい集積回路ができると考えられます。
こうした研究は、日本でもあちこちの企業や大学が進めていますが、トランジスタを生みだしたベル研究所のホームページにアクセスすると、ぺらっとした透明なプラスチック・フィルムの電子回路を見ることができます。ベル研究所は、プラスチックのトランジスタの開発に成功したのだそうです。
ベル研究所は、シリコンのゴムのスタンプを使ってコンピュータの回路を印刷する技術も開発したので、Tシャツに図柄をプリントするような感覚でトランジスター回路を印刷することもできるそうです。現在の集積回路は、基板上に写真露光の原理で電子回路をつくっていますが、シルクスクリーンのような印刷技術の要領で、より簡単に集積回路ができるというわけです。
プラスチックのトランジスタはシリコンの半導体を使うより安くできますし、こうした技術を使えば、プラスチックや布、曲がったものにまでコンピュータ回路が印刷できることになります。
21世紀は、身の回りのいたるところにコンピュータが入りこむ「どこでもコンピュータ」の時代になると考えられていますが、こうした技術は、そうした時代に必要不可欠の技術なのかもしれません。
さらにベル研究所は、こうした導電性プラスチックのトランジスタと電子ペーパーの技術を融合させようとしています。ベル研究所が提携を発表した電子ペーパー技術は、マサチューセッツ工科大学で生み出された超薄型ディスプレイ技術で、前ページで触れた有機ELとはまた別のものですが、いずれにしても超薄型のディスプレイ、超薄型の電池、そして超薄型のIC回路ができれば、「紙のようなディスプレイ」や「紙のような電池」どころか「紙のようなコンピュータ」ができることになります。
印刷するような感覚できわめて安く簡単にコンピュータ回路ができるということになれば、決済や身分証明書になるスマートカードにも利用できます。どこにあるかリアルタイムの情報を発信してくれる荷物のタグとか、スーパーの商品にバーコード代わりに印刷しておけばレジの横を通過するだけで支払いができてしまう仕組みなども活かせるでしょう。
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