最優秀賞 文部大臣奨励賞
 
「たまごの不思議」
 
中田 継一 大阪教育大学附属平野中学校2年
いつも家にあって、一番身近なものと言えば、それは「たまご」だ。
たまご料理は、一見簡単なので僕も一人でよく作る。でも、一番簡
単ないり卵を作った時でさえ、その時々によってかたさが違い、な
かなか好みのかたさにできないことが多い。母のやり方を見ている
と、調味料、火加減など少しずつ違っているように見えたので、一
度追求してみようと思い、いろんな卵液を作り実験してみた。

 好みのかたさにできないのは、卵のタンパク質が熱のかかり方の
わずかな違いで、固まり方がたいへんに違ってくるようである。と
くに、火加減と加熱速度によって大きく影響を受け、短時間に温度
が激しく上がるときには、その固まりかたが強く、かたくて口あた
りが悪くなる傾向がある、次に調味料では、砂糖を入れている母の
経験から、砂糖の量だけを考えて他は同じ配合のいり卵をつくり、
味覚テストで比較してみた。結果は、卵に砂糖を多く加えるほど柔
らかく、口あたりもなめらかになることが分かった。しかし、砂糖
の量が三〇パーセントを越すと、急にいり卵の黄色が強くなり、口
あたりがベタベタして甘味も必要以上にひどくなってしまう。

 いろいろな点から総合すると、いり卵の場合では、砂糖の量が材
料の卵に対して一五パーセントくらいが良いようだ。その理由は、
砂糖には水を抱えこみ、その水を水として働かせない作用があるた
めである。砂糖は、その重さの半量の水分を完全に抱えこんでしま
う。したがって、卵に砂糖を加えると、砂糖の半量分の水を卵から
減らした勘定になる。このようにしてみると、いり卵に加える砂糖
は甘味だけではないのであることがわかる。砂糖の加え方によって、
卵のタンパク質の固まる温度を変えることができ、つまり、砂糖を
加えておけば、少々熱がかかりすぎても、かたくボロボロにならな
いですむのである。卵のタンパク質が固まることがわかるものとし
てゆで卵がある。ただ卵をゆでるだけなのに、なかなかむずかしい
のが半熟卵。それは卵がタンパク質でできているからである。

 タンパク質は、熱がかかると変性といって性質が変わり、凝固す
る。その変わりかたは卵の場合二段階になっている。第一段階は、
加熱によってタンパク質の分子の形が粗い網目状になること。第二
段階はその網目が細かく詰まってかたくなることである。その第一
段階の変性を起こしたときに加熱をやめると半熟卵ができるが、も
う一つ問題がある。それは卵白と卵黄とは熱で固まる温度が違うこ
とである。卵白だけをとり出して 実験すると五八度で固まりはじ
め、六五度くらいから流動性を失い、七〇度くらいから固まってし
まう。そして八〇度以上になると完熟卵になってしまう。一方、卵
黄は、六五度〜七〇度で完全にかたく固まる。卵白と卵黄のこの固
まる温度の違いを利用して、卵を六五度〜七〇度で完全にかたく固
まる。卵白と卵黄のこの固まる温度の違いを利用して、卵を六五度
〜六八度のお湯に三〇分以上つけておくと、卵白はドロドロしてい
るのに卵黄は固まった状態の「温泉卵」ができる。でも、これは半
熟卵ではない。温度を変えてテストをした結果、一〜二個だけでよ
い場合は、中くらいのなべにいっぱい湯を沸かして火を止め、そこ
へ卵を入れて一五分置けば半熟卵がうまくできた。

 ゆで卵で気になることが一つある。それは卵黄と卵白の境目にで
きる「黒い色」である。調べてみると、この色は、卵白の中に含ま
れているシスチンという、卵黄の鉄分とくっついて硫化鉄という化
合物をつくるからである。硫化鉄は黒い色をしているので、硫化水
素と鉄が接触する、卵白と卵黄の境目が黒くなるのである。硫化水
素は卵が腐ったときのあのいやなにおいの成分でもある。

 身近にある卵、そしてよく調理される卵だが、あの小さな形の中
に、いろいろな働きがあることを、つい見逃しているように思えた。
小さな卵でもその性質、成分をよく知ることにより、いっそう理解
できるものになっていくと思う。卵が持ち、常に働いている不思議
を少し分かったような気がする。