優秀賞 全国中学校理科教育研究会会長賞
「色という化学」
松田 直樹 兵庫県私立白陵中学校2年
ちょうど今から一年半ほど前のとき。中学校に入って始めての実験
だった。「炎色反応。」始めて化学室に入った喜びと同時に大きな
感動を得た。塩化バリウム、硫酸銅、とバーナーの火に入れると同
時に、ときにはこく、ときにはうすく色が出た。実験は色を調べる
だけで終わったが、なぜこのように美しい色が出るのか、そのこと
をとても不思議に思った。実験中に、いくつかの仮説をたてた。も
のが燃えるときに、赤い火を出すものもいればバーナーなどのガス
のように青い火を出すものもある。ろうそくは黄色、このように中
の成分によって燃え方が変わりいろいろな色が出た。というのと、
火にふれることで、熱をうけた物質が化学変化をおこし、その際、
何らかの原因で色が出たというもの。などだった。しかし、実験後
に先生が「中に入っている金属によって色の表われ方がちがう。」
と言われたことで後の方の仮説はくずれてしまった。「金属どうし
がくっついたりはなれたりしてもおそらく何の変化もないだろう。
それ以上に、カルシウムとか銅そのものに何かある。」ぼくはそう
考えた。家に帰ってからあることを思い出した。周期表だ。さっそ
く見て、おどろいた。銅をのぞくすべての元素が一行目か二行目に
入っていたのだ。「これだっ。」と思ったがやっぱり分からなかっ
た。一、二行目は第1、2族とよばれるのだが、第1、2族という
ものに何か共通点はあるのか、姉の化学の本が本だなにあったので
めくってみた。第1族…あった。「不安定」「水とも反応して…」
という言葉があったがどれもぴんとこなかった。「炎色反応」と書
いてあったのが少し残念だった。なぜなら、自分が始めて炎色反応
は第1、2族が起こすということを発見したと思っていたからだ。
それはともかく、炎色反応についての説明はそこになかった。一人
でなやんでいてもしかたないので家に帰ってきた父さんにきいてみ
た。すると「これを見てみ。」と言われて差し出されたのは「理化
学辞典」であった。引いてみたが、全く分からない言葉がならんで
いた。分かったのは後の表が元素と炎色反応の色の関係を表してい
るということぐらいだった。そしてやはり炎色反応をおこすものは
第1、2族でさらに13、14、15族もいくつかがおこしていた。
関係は見えてきたが、やはり分からないのでお父さんになぜ色と周
期表には関係があるかを聞いた。するとお父さんは電子のことから
説明してくれた。ここからおどろきの連続だった。原子というもの
は、中心にある原子核と、そのまわりをまわる電子でできている。
いわば太陽の周りを回る太陽系のようなものである。そして一つ一
つの惑星に一つ一つの軌道があるように電子も、入ることができる
軌道は決まっている。そして入ることのできる電子の数もきまって
おり、電子は内側に落ち込もうとするということを教えてもらった。
そして色のことだった。原子が熱せられると電子の一つが軌道から
とび出してしまう。すると外がわの軌道から電子が、とび出した電
子がもとあったところに落ち込む。この落ち込む動きが光を出して
いるのだという。さらに落ち込む大きさによって光の色もちがって
くる。こうしてたくさん放たれた色の中でもとくに強いものが、炎
色反応の色として見えるのだ。そしてふつうは第1、2族しか見ら
れない炎色反応だが、実はほかの種類の原子でもおこっており、そ
れが私たちの目に見えるか見えないかのちがいだそうだ。やっと納
得のいった僕だったが、ここからもっと驚く話を聞くことになる。
今ふだんの生活で見ている色、たとえば本の背表紙が青だとかはさ
みが赤だとか、ごみ箱が緑だとか。こういうものはすべて光があた
ることにより電子がとび出し、落ちこむ動きから放たれる光の色を
見ているのだということを。化学のことでこれだけおどろいたのは
初めてだった。つまり色というものは光があってこそ存在するもの
であって、光のないところではただの原子でしかない。色を見るこ
とは同時に原子レベルでおきている化学の世界をのぞいていること
に深く感動した。
身近な色という存在。これが化学なのかと思うと、炎色反応は、化
学に親しみをもたせてくれた実験だったと思う。今でもときどきふ
っとそのことを思いだす。ペンキをもって色をぬるとき、ふと手を
とめたもの、「ああ、今自分は化学を見ているんだなあ。」