最優秀賞 夢・化学特別賞
「宇宙線を見る化学の実験」
木村 恵利香 仙台市立五橋中学校3年
中学二年の夏休みを利用して、私は町の中の宇宙線(放射線)を調
べました。
放射線測定協会から宇宙線を測定する器械「はかるくん」を借りて
町のあちこちを測定しました。最初、自分の机の上に放射線測定器
を置いてスイッチを入れると、「ピーン、ピーン」という小さな電
子音の響きと共に、0.018マイクロシーベルト時の数値が表示され
ました。表示の数値は刻々と変化していきます。もちろん、宇宙線
自体が音を発するのではなく測定器への衝突を検出して電子音に変
換しているのです。
身の回りには宇宙からの宇宙線が飛来しているということを知識と
してわかっていることと、実際に自分の目と耳で確かめることとに
は大きな違いがあります。
「百聞は一見にしかず」というのはこのことを言うのだと思いまし
た。私は循環バスに乗って、市内の停留所ごとの宇宙線の量を測定
しました。さらには、近くの図書館、地下鉄の駅の中、30階建の高
層ビルの中、そして、遠くは80キロも先にある東北電力女川原子力
発電所まで調べに行きました。
原子力発電所の中には入ることはできなかったので正門の前で測定
しました。
この中で、もっとも宇宙線量の数値が高かったのは、地下鉄駅の階
段のそばで、0.065マイクロシーベルト時でした。私の家の前と原
子力発電所の正門の前の宇宙線量は同じ0.018マイクロシーベルト
時でした。
地下鉄駅の階段に次いで宇宙線量の数値が高かったのは、家の近く
にある若林区立図書館でした。図書館は、厚いコンクリートの中に
遮蔽されているので、宇宙からの宇宙線は減少するので、ほぼゼロ
になると私は想像していました。
それが逆に数値が高かったのでビックリしてしまいました。図書館
でその原因を調べてみると、コンクリートの中に含まれる自然の放
射線であることがわかりました。
宮城県原子力PRセンターに行った時、宇宙線を目で見ることので
きる「放射線チェンバー」という装置がありました。
私が放射線測定協会から借りた測定器は、数値を「マイクロシーベ
ルト時」という数字であらわすと同時に電子音に変換させ音で聞く
ことができます。でもこの器械では、宇宙からどのような形で宇宙
線が降りそそいでくるのかはわかりません。放射線チェンバーは、
宇宙から降りそそぐ宇宙線をオレンジ色に変換して目に見えるよう
にしていました。
規則正しく垂直にではなく、さまざまな角度から降りそそいでいま
した。
夏休みの間、約300箇所余りの宇宙線量を測定し、その記録はノー
ト一冊分になりました。その後、私は簡単な方法で、宇宙線を自分
の目で見るようにすることはできないだろうかとずうっと考えてい
ました。
今年の夏の初めごろ、宇宙線を自分の目で見ることのできる化学の
実験方法を見つけました。インターネットで「宇宙線」について検
索していた時、放射線を簡単な化学の実験装置で作ることができる
ことがわかり、小学六年生の弟と小学四年生の妹と共に宇宙線を見
る実験に挑戦してみることにしました。
実験に用意するものは、浅いポリ容器(弁当箱くらいがちょうどい
い)、黒画用紙、エチルアルコール、透明なフィルム、ドライアイ
ス、懐中電灯、そしてポリ容器よりひとまわり大きなスチロール製
のトレイです。
ドライアイスは、アイスクリームを買った時に量を少し多めにわけ
てもらいました。
だから買ったのはエチルアルコールだけです。実験は、スチロール
のトレイの上にドライアイスを置きます。そして、弁当箱の容器に
ティッシュペーパーを敷き、その上に黒画用紙を置きます。黒画用
紙の上からエチルアルコールをゆっくりと注ぎます。エチルアルコ
ールの入った容器をドライアイスが置いてあるトレーの上に置きま
す。
準備はこれでOKです。このあと、部屋を暗くします。ドライアイ
スの上に置いた容器が冷えてくると弁当箱のアルコールから蒸気が
発生してきます。しばらくすると、白い筋が走るのがわかります。
懐中電灯で照らすとよくわかります。一分間に数回の割合で白い筋
のような線が見えます。ドライアイスで冷えたアルコールの蒸気の
中に宇宙線が飛び込むと、アルコール原子の中の電子が宇宙線では
じき飛ばされるのだそうです。すると、原子は電気を帯びて、宇宙
線の通った道筋を見ることができるのだそうです。この実験装置の
ことを「霧箱」と呼ぶのだということを後になって知りました。初
めて宇宙線を計測してから、宇宙線を自分の目で確かめて見る化学
の実験をするまで一年もかかりました。
でも、とても楽しい時間でした。