優秀賞 日本化学工業協会会長賞
 
   「タオルと化学の夢」
 
 村瀬 有紗 愛媛県今治市立日吉中学校1年
私の住む「今治市」は、タオルの町です。その生産量は、日本一を
ほこりましたが、最近では中国からの安い製品に押されて、やめて
いく会社がたくさん出てきています。

なぜ、今治のタオルは中国の製品に負けたのでしょうか? それは
中国が、日本と同じ機械で同じ製品を安い人件費で作っているから
だ、といいます。

同じ製品を、同じ機械で作っているのなら、人件費の安い方が安い
値段をつけられるのは当たり前です。なぜ、今治のタオルは、中国
のタオルと違う、価値の高いタオルを生み出すことができないので
しょうか? 私は何人かの人に聞いてみました。その人たちは笑っ
て、「そんな知恵があればいいのにねえ。」とか、「みんな考えて
いるんだが、わからないんだよ。」と首をふるばかりでした。

私は図書館でいろいろな本を探してみました。タオルの歴史、その
前の綿布の歴史、織り方の歴史、さらしの歴史、プリントの歴史、
そしてそれらがみんな「化学」と関係が深いことに気がつきました。
私は『化学』の本を読んでみました。化学には、いっぱいの夢がつ
まっていました。そして、タオルの問題の解決も、そこにあるよう
に思いました。

私はまず、今のタオルの不便な点を考えました。それは、かわきに
くいということです。そこで私は次のようなせんいを考えました。
それは、スポンジせんいです。スポンジせんいは、軽く体に当てる
と素早く水を吸い取ります。そして強く押すと、簡単に水をはき出
します。これで、しぼりにくい、かわきにくいという欠点が解決し
ます。

次には、プリントのと料を改良します。香料を混ぜるのです。汗と
反応するとラベンダーの香りを出すとか、強くこするとバラの香り
がするとか、そんなと料を考えます。お湯と反応して、けやきの香
りが出るのもいいです。

形も伸縮自在のせんいを考えます。形状記おくのせんいを混ぜて、
お湯の温度で形を変えられるのです。細長く使ったり、正方形にし
たり、たわしのように丸めたりできます。

まだまだ考えられますが、そのように化学の力を使えば、タオルが
変われる「可能性」は大きいはずです。化学の力は、今の私たちの
暮らしを支えてくれているだけではなく、さらに進めてくれる力も
持っているのですから、その力に頼ることを真剣に今治のタオル会
社の人たちは考えるべきだと思います。

でも、一つ心配があります。それは、染色工場から捨てられる汚れ
た水です。そのひどい色の水は、今では浄化されていますが、昔は
そのまま海に捨てられていた時代がありました。そして今でも、海
に捨てられたビニールやつり糸が、カメや海鳥を殺している写真を
見たことがあります。

化学の力は人間には素晴らしくても、野生の動物たちにはひどい災
いを作ってきました。今新聞でよく言われている「環境ホルモン」
の問題もそうです。

今まで人間は、化学の便利さばかりを見てきました。そして、その
力の大きさが環境を汚してしまったことに気付いたら、それも化学
のせいにしています。でも、本当は人間の欲望が作った誤りだった
のです。「化学」という力には、何の罪もないのです。それどころ
か、人間には絶対必要な力なのです。

だからその解決は、やはり「化学」の力がしなければいけません。
これからのビニール袋はカメにも無害化した上で、海水に反応した
ら溶けるとか、固形化するものを考えます。つり糸は使用期間があ
るものを作ります。その期間を過ぎれば海水に溶けるのです。今海
にただよっている古いビニールは、それを吸着する性質を持つ物質
を作り、回収を始めます。つり糸もそうです。

人間が作った化学のあやまちは、同じ化学の力でしか解決できない
でしょうが、きっと未来の化学が完全に実現してくれると思います。

世の中が進歩できるのも、後退させられるのも本当は化学の優れた
その実力ではなく、その使い方によるものだ、とみんなも気付いて
いるからです。

私たちの町のタオル産業、その再繁栄もきっと「化学」が先導して
くれるはずだ、と私は信じています。そしてそれは、絶対地球の環
境を汚さない、正しい使用によって出来るはずです。