最優秀賞 文部科学大臣奨励賞
 
    「先人の科学」
 
    山野 希 兵庫県 私立白陵中学校1年
私の母はよく黒豆を煮る。私はこの前、何の気なしに母が黒豆を煮
ているのを手伝って目が点になった。なんと、母が鍋の中に、さ
びた鉄の釘≠入れようとしていたのだ。びっくりした私が、母に
なぜそのような食べられないものをいれるのかと聞くと、色をよ
り黒くするため≠ニの事。よく聞くと、曾祖母の頃からさびた鉄の
釘を使って来たそうだ。そこで私は黒豆の色素とさびた鉄の関係に
ついて調べる事にした。

まず、黒豆と共に煮る鉄の釘がなぜさびたものでなければならない
のかという疑問を解決するため、釘、さびた釘、なにもなしの三種
類で黒豆を煮てみる事にした。豆を煮る時に釘を、いっしょにガー
ゼ等にくるんで入れるのだが、煮ていると、私はある事に気付いた。
釘を入れた鍋だけ、あまりあく≠ェでていないのだ。あくがでな
いという事と、黒豆の色の変化に関係あるのか?と思いつつ、釘だ
け他と変化が違うだろうと期待しながら待つこと五時間。出来上が
った煮汁を含ませ比べた結果は……。なんと、さびた鉄の釘だけが
黒く、他の2つはなんともいえない色だった。紙に吸いこませて色
を見たのだが、さびた鉄の釘の紙だけ後で触ると硬かった。

ところで、私にはもう一つ気になる実験の結果があった。それは、
鍋に入れた、さびた鉄の釘が、鍋に入れて煮るまでは、赤かったの
に、煮終って鍋から取り出した時には黒くなっていた事だ。たぶん、
元々の赤さびが熱せられた事によってはがれ、その中の黒い部分が
出て来ただけだとは思うが……。となると、そのはがれた赤い部分
が、黒豆の色をより黒くしているのではないのだろうか?それが証
拠に赤くさびた粉の様なはがれたと思われるようなものもなく、し
かし、さびた鉄の釘は、鍋に入れた時より、幾分スマートになって
鍋から出てきた訳なのだから、なにかがはがれ落ちていなければお
かしい筈である。

私はこの実験について調べるため、黒豆の色が黒くなる時の科学変
化について調べて見た。すると、黒豆の皮の濃い紫色の水溶性アン
トシアン系クリサンテンミンが鉄の持っている金属イオンと出会い、
より鮮やかな黒色に発色するという事がわかった。金属イオンとは
金属が電子を放出して十の電気を帯びたイオン(陽イオン)になっ
ている事らしい。これは、黒豆だけに言えるのではなく、植物の色
素に金属のイオンが結びついた場合は全て、錯体という化学的構造
を作り、鮮やかな色を発色したり、水に不溶な物質に変化するとい
う事もわかった。また鉄でも、実験ではならなかったのだが、多少、
さびた鉄程ではないにせよ黒くなったりもするらしいのだ。それと、
レモンや、梅干等の酸を黒豆に加えて煮るとピンク色に染まるとい
う事がわかった。

どうやら、さびた鉄≠アれだけが黒豆の色をかえる事ができると
いう訳ではないらしい。という様な事で、黒豆がさびた鉄と共に煮
ると色が黒くなるというのはただ単に、金属がイオン化したものと、
黒豆の皮の成分が結びつき、黒豆の皮の色がより鮮やかになっただ
けという事がわかった。だから、豆それぞれによって金属イオンと
結びついた時に発色する色は異なっており、だいずとさびた鉄を煮
ても黒くなるだろうかと思い、煮てみたところ、こころもち黄色味
が増したような気がするが、その他は黒くもなんともならなかた。

ところで、黒豆を煮る時にさびた鉄くぎを入れる≠ニいう事につ
いて調べていると何度も、先人の知恵という言葉を見つけた。私た
ちの先祖もまた、生活の中で化学を使っていたんだと思うと、なん
だか生きていくために本当に化学は必要だとしみじみ思った。

最後に、黒豆を鉄鍋で煮るということと、さびた鉄くぎを入れて煮
ることは、同じ効果らしいので今度からは、南部鉄の鍋で、黒豆づ
くりに挑戦しようと思う。